心臓血管外科

この度、手術室の手術台、麻酔器等の新しい機器を導入致しました(※2023年11月22日導入完了)。
今後も出来る限り新しい機器を取り入れ、患者様により快適で安心な治療を受けていただけるよう、設備を整えていきたいと考えております。

各種オペの説明

冠動脈バイパス術について

心臓の表面には、心臓を栄養する血管(冠動脈)が右に1本、左に2本走っています。心臓は冠動脈により栄養や酸素を運んでもらうことで動いています。年齢や動脈硬化などが原因で、冠動脈が細くなって流れが悪くなったり、詰まってしまうと、狭心症や心筋梗塞といった命に関わる病気になってしまいます。

程度が軽い場合は、血管を広げる薬や血液をサラサラにする薬で治療を行いますが、より症状が強い場合はカテーテル治療や冠動脈バイパス術が必要になります。カテーテル治療は循環器内科、冠動脈バイパス術は心臓血管外科で行います。

冠動脈バイパス術は、狭い道の先に新しい血管をつなぐ(バイパス)ことで、心臓の筋肉へ血流を増やす治療です。バイパスとして使う血管は様々ですが、胸骨(胸の真ん中にある骨)の裏をはしる内胸動脈(左右に1本ずつ)、肘から手首までを走る橈骨動脈、足の皮膚の下を走る静脈などを使います。

手術は全身麻酔で、胸の真ん中を20cmほど切ります。冠動脈は1-2mmと細く、髪の毛ほどの細さの針糸でバイパス血管と繋ぎ合わせます。

胸が痛い、最近動くとしんどいなどの症状があれば、早めに病院を受診し、検査で冠動脈の状態を把握して治療することが大切です。

弁置換、弁形成術について

心臓は4つの部屋に分かれており、それぞれの部屋の出口には一方弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)がついています。通常、この弁のおかげで、血液を正しい流れで全身へ送り出すことができています。これらの弁が、出口が狭くなって十分血液を送り出せなかったり(狭窄症)、逆に弁の立て付けが悪くなってきちんと扉が閉まらずに逆流してしまったり(逆流症/閉鎖不全症)することがあります。すると、少しの動作で疲れやすい、息切れがする、胸が痛むなどの症状が現れ、進行すると心不全となり入退院を繰り返すことになります。

4つの弁のうち、手術が必要になる弁膜症のほとんどが大動脈弁と僧帽弁の異常です。まずは薬で調節することが必要ですが、症状が進行したり、薬で症状改善しない場合は手術が必要になることがあります。

手術は、全身麻酔で行います。胸の真ん中の皮膚を20cmほど大きく切り、胸骨も縦割りします。心臓が動いていると手術できないので、心臓を一時的に止める必要があります。その間は、人工心肺(最近コロナ禍で話題の「ECMO:エクモ」と同じようなもの)をつかって、全身の臓器に血液を送り届けるので、心臓を止めても問題ありません。

弁形成術

自分の弁を、人工弁に入れ替えるのではなく、弁の異常な部分を修理することで治療する方法です。僧帽弁閉鎖不全症に行っている手術です。異物を入れない分、様々なメリットがあります。手術の後一時的に血液さらさらの薬が必要ですが、生涯飲む必要はありません。また感染症も弁置換に比べ起こりにくいです。一方で、完全に修復することは難しく、多少逆流症が残ることがあります。将来的に再発する可能性もあります。また、弁形成の予定でも、実際手術して十分逆流が取りきれない場合は、無理はせず弁置換をすることがあります。

人工弁置換術

修復不可能な弁には、人工の弁を付け替える手術をします。人工弁には大きく2種類あります。金属などでできた機械弁と、ブタの大動脈弁やウシの心膜でつくった生体弁です。どちらも利点と欠点があり、ご本人の年齢や病態により、どちらがよいか相談します。

機械弁
生体弁
素材
金属
ブタの大動脈弁やウシの心膜
耐久性
何十年
10~15年
抗凝固療法
(血液さらさらの薬)
生涯飲み続ける
一時的
弁に血栓ができやすい
できやすい
できにくい
どういう方が多いか
●年齢による推奨
[大動脈弁]60歳未満
[僧帽弁]65歳未満
●推奨以上の年齢でも、
すでに他の弁位に機械弁が入っている
●推奨以上の年齢でも他の病気で抗凝固剤
(血液さらさらの薬)を飲んでいる
●年齢による推奨
[大動脈弁]65歳未満
[僧帽弁]70歳未満
●抗凝固剤(血液さらさらの薬)を飲めない
●出血性疾患や肝機能障害のある人
●妊娠希望の女性
●推奨未満の年齢でも生体弁・機械弁

心臓弁膜症サイトより:https://www.benmakusho.jp

各病気の説明

腹部大動脈瘤の患者さんへ

心臓から全身に血液を運ぶ一番太い動脈を大動脈といいます。大動脈は心臓をで背骨に沿って下に向かって走り、おへそのしたあたりで2つ分かれ、それぞれ左右の足に流れていきます。このうちお腹を走る大動脈を腹部大動脈といいます。通常腹部大動脈は直径2cm程度ですが、これが1.5 倍(3cm)以上に膨らみ、“瘤(コブ)”のようになったものを“腹部大動脈瘤”といいます。

瘤がある程度(5-6cm)の大きさまで拡大すると、動脈の壁が薄く弱くなって、最終的に破裂します。破裂する非常に強い腹痛や背部痛を生じ、大量の血液が失われ、そのまま命を落としてしまう大変危険な病気です。そのため破裂する前に治療することが大事です。

ただし、腹部大動脈瘤は大きくなってもほとんと?が無症状です。CTやエコーて?たまたま見つかることが多いて?す。 大動脈瘤は、動脈硬化、高血圧、年齢、喫煙などが原因と考えられています。特にタバコを吸うと、瘤の拡大速度が速くなると言われており、禁煙は必須です。喫煙歴のある65歳以上の男性では、エコー検査やCTで検診しておくことが勧められています。

大動脈瘤にならないように、これらの生活習慣を直すこと、また大動脈瘤が見つかった場合は、定期的に病院に受診し大きくなってこないか検査し、破裂する前に治療(手術)する必要があります。

手術方法は大きく分けて、開腹人工血管置換術とステントグラフト内挿術の2つあります。どちらも利点と欠点があり、ご本人の年齢や、大動脈瘤の形などでどちらが適切か検討します。当院では開腹人工血管置換術を取り入れています。ステントグラフト内挿術が必要な場合は、関連病院(和歌山県立医科大学)へご紹介いたします。

下肢静脈瘤について

心臓から全身(足)に血液を送る血管を「動脈」、返ってくる血管を「静脈」と言います。
足の静脈の中の血液が心臓に戻るには、重力に逆らって上昇しなければなりませんが、静脈には逆流防止「弁」がついていて、血液の逆流を防いでくれています。さらにふくらはぎの筋肉がポンプの役割で下から上へと血液を汲み上げてくれます。

下肢静脈瘤とは静脈内の逆流を食い止める弁が壊れて血液が逆流することで起きる病気です。
直ちに命に関わる病気ではないですが、足のだるさ、こむら返り(足がつる)、むくみなどの症状で日常生活に支障が出たり、進行すれば皮膚炎や潰瘍(ただれ)ができたりすることもあります。

治療法は、弾性ストッキングや生活習慣の見直しなどの保存治療と、手術があります。当院での手術は、血管内焼灼(ラジオ波)術を基本として行っております。ご本人の年齢や希望、病状に合わせて適切な治療法を考え、一緒に治療していきますので、お気軽にご相談ください。

※血管内焼灼(ラジオ波)術:弁の壊れた静脈にカテーテル(管)を入れて血管内の壁を熱で焼き、閉塞させる手術です。近年主流の治療法です。

データベース事業に参加

外科・心臓血管外科では、2023年10月1日より専門医制度と連携したデータベース事業に参加しています。
これは患者さんに、より適切な医療、最善の医療を提供するために本邦で開始された取り組みです。